アルティン環
アルティン環(みぎアルティンかん、英: right Artinian ring, right artinian ring)とは、右イデアルが降鎖条件を満たすときを言う。つまり環自身を右加群と見たときにアルティン加群であるときのことである。 右アルティンかつ左アルティンな環のことを、両側アルティン環(two-sided Artinian ring, two-sided artinian ring)、もしくは単にアルティン環と呼ぶ。
右実は右アルティン環は右ネーター環であるというが知られているので(Hopkins-Levitskyの定理、下記#右アルティン環は右ネーター参照)、右アルティン環は「自身を右加群と見て長さ有限加群」と定義することもでき、実際はこちらを普段は意識することが多い。
右アルティン環[編集 | ソースを編集]
環 $\Lambda$ が右アルティン(right Artinian, right artinian)であるとは、$\Lambda$ の右イデアルの集合が降鎖条件を満たすときを言う。つまり、右イデアルの減少列 \[ \Lambda_\Lambda \geq M_1 \geq M_2 \geq \cdots \] があると、必ずある $N$ が存在して $M_N = N_{N+1} = \cdots$ が成り立つ(詳しくはアルティン加群を参照)。
同値な定義[編集 | ソースを編集]
加群を考えるという立場からすると、次が基本である。証明は以下の#右アルティン環は右ネーターから従う。
環 $\Lambda$ について次は同値である。
- $\Lambda$ は右アルティン。
- 任意の有限生成右 $\Lambda$ 加群がアルティン加群。
- 任意の有限生成右 $\Lambda$ 加群が長さ有限加群。
- 有限生成右 $\Lambda$ 加群の圏 $\mod\Lambda$ は長さ有限アーベル圏となる。
環の表現論では有限生成加群を考えることが多く、その場合 $\mod \Lambda$ がそもそもアーベル圏であるのがうれしいので、通常は大抵は右ネーター(普通は両側ネーターも)を課すが、さらにアルティンだと、任意の有限生成加群が長さ有限となるので、より都合がよい。具体的には、長さについての帰納法が使えたり、純粋に長さの制約があるのでかなりいろいろなことが分かる(長さ有限アーベル圏も参照)。
両側アルティン環[編集 | ソースを編集]
環 $\Lambda$ が両側アルティン(two-sided Artinian, two-sided artinian)とは、右アルティンかつ左アルティンなときを言う。 一般に、右アルティン環であっても左アルティンとは限らない。
TODO: そういう例を挙げる
多元環の表現論では、体上の有限次元多元環を考えるので、あまり左右を意識することはない。
右アルティン環は右ネーター[編集 | ソースを編集]
TODO: なにか証明なり議論をかく
例[編集 | ソースを編集]
- 有限次元多元環は両側アルティン環である。これは右・左イデアルがベクトル空間としての部分空間であることからすぐに従う。
- より一般にアルティン代数は両側アルティン環である。
- 可換アルティン環は、Krull次元が0次元の可換ネーター環のことである。可換環の表現論ではあまり0次元のときに限定して調べることはしないが、重要なクラスであることに違いはない(正則列により結局は0次元の場合に帰着させることも多い)。
関連項目[編集 | ソースを編集]
一般概念[編集 | ソースを編集]
- ネーター環:右アルティン環は右ネーター環である。