完全環

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完全環(みぎかんぜんかん、英: right perfect ring)とは、任意の右加群が射影被覆を持つような環のことである。半完全環(任意の有限生成加群が射影被覆を持つ環)の場合と異なり、完全環という概念は左右対称ではない、すなわち右完全環は左完全環になるとは限らないことに注意が必要。

特徴づけ[編集 | ソースを編集]

Krull-Schmidt圏と深く直接的に結びついていた半完全環の場合に比べて、完全環の特徴づけは次のBassのものが知られており、かなり非自明なものである。

定理(Bass)

環 $\Lambda$ について次は同値である。

  1. $\Lambda$ は右完全。
  2. $\rad \Lambda$ はJacobson根基とする。$\Lambda /\rad\Lambda$ は半単純環であり(つまり $\Lambda$ は半局所環)、かつ $\rad \Lambda$ は右 T 冪零である、つまり次の条件が満たされる:任意の $\rad \Lambda$ の元の列 $a_1, a_2, \dots$ に対して、ある $n$ が存在して、$a_n \cdots a_2 a_1 = 0$ となる。
  3. 任意の平坦右加群射影加群である。
  4. 任意の単項イデアルが降鎖条件(DCC)を満たす。

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任意の右アルティン環は右完全環かつ左完全環である。これは上の定理の2を使えば分かる。またより一般に、任意の半準素環も右完全環かつ左完全環である。

アルティン環との関係[編集 | ソースを編集]

上で見たように片側アルティン環は完全環であるが、逆にネーター性を課すと逆も成り立つことが分かる:

定理

$\Lambda$ を右完全環かつ右ネーター環とすると、$\Lambda$ は右アルティン環である。

証明

一般に右完全環の $T$ 冪零性を用いた特徴づけ(上記定理の条件2)から、$\Lambda/\rad\Lambda$ は半単純環かつ、$\rad\Lambda$ の任意の元は冪零元である。ここで、Levitskyの定理(右ネーター環上で、全ての元が冪零であるようなイデアルは、冪零イデアルである)から、$\rad\Lambda$ は冪零イデアル、すなわちある $N$ が存在して $(\rad \Lambda)^N = 0$ となる。 ここから $\Lambda$ は半準素環 となるが、Hopkins-Levitskyの定理により半準素環かつ右ネーター環は右アルティン環であるので、主張が従う。最後の部分は、単に次の列 \[ \Lambda \supsetneq \rad\Lambda \supsetneq (\rad\Lambda)^2 \supsetneq \cdots \supsetneq (\rad\Lambda)^N = 0 \] を考えれば、隣り合ったところでの商は有限生成右 $\Lambda/\rad\Lambda$ 加群なので、長さ有限であるので、$\Lambda$ が右加群として長さ有限なことから従う。

関連項目[編集 | ソースを編集]

一般概念[編集 | ソースを編集]

  • 半完全環:任意の有限生成加群が射影被覆を持つような環。

特殊概念[編集 | ソースを編集]