Serre部分圏
アーベル圏のSerre部分圏(セールぶぶんけん、英: Serre subcategory)とは、部分対象と商と拡大を取る操作で閉じた部分圏のことである。
群と部分群とのアナロジーで言うと、Serre部分圏はアーベル圏の正規部分群のようなもので、「完全関手の核はSerre部分圏」「逆にSerre部分圏が与えられるとアーベル圏をそれで割れる(アーベル圏の局所化)」が知られている。また与えられたアーベル圏のSerre部分圏の分類という問題は、部分圏の分類問題の中で最も古典的で重要なものである。
定義[編集 | ソースを編集]
アーベル圏 $\AA$ と、その部分圏 $\SS \subseteq \AA$ を考える。このとき、$\SS$がSerre部分圏(Serre subcategory)であるとは、次が満たされるときを言う: 任意の $\AA$ での短完全列 \[ 0 \to L \to M \to N \to 0 \] に対して、$M \in \SS$ であることと、$L \in \SS$ かつ $N \in \SS$ であることが同値である。
定義をより分かりやすく分解すると、Serre部分圏とは次の条件を満たす $\AA$ の部分圏である:
- $\SS$ は部分対象で閉じる、すなわち、$M \in \SS$ と単射 $L \hookrightarrow M$ があれば $L \in \SS$ となる。
- $\SS$ は商対象で閉じる、すなわち、$M \in \SS$ と全射 $M \twoheadrightarrow N$ があれば $N \in \SS$ となる。
- $\SS$ は拡大で閉じる、すなわち、短完全列 $0 \to S_1 \to M \to S_2 \to 0$ でがあり $S_1, S_2 \in \SS$ であれば $M \in \SS$ である。
性質[編集 | ソースを編集]
完全関手の核[編集 | ソースを編集]
アーベル圏の間の完全関手 $F \colon \AA \to \BB$ を考える。このとき、その核(kernel )$\ker F$ は次で定義される $\AA$ の部分圏である: \[ \ker F := \{ A \in \AA \,\vert\, FA \cong 0 \} \] このとき、$\ker F$ は $\AA$ のSerre部分圏であることが簡単に分かる。 下で見るように、逆に全てのSerre部分圏はこのようなものとして現れる。
局所化(Serre商)[編集 | ソースを編集]
アーベル圏 $\AA$ のSerre部分圏 $\SS$ が与えられたとする。このとき、$\SS$ を0に潰すような完全関手のなかで普遍的なものが存在し、それを $\AA$ の $\SS$ による局所化やSerre商(Serre quotient)と呼ばれる。
より正確には、次の普遍性を満たすアーベル圏 $\AA/\SS$ と完全関手 $Q \colon \AA \to \AA/\SS$ が存在する:
- 任意の $S \in \SS$ について $QS \cong 0$ である。
- アーベル圏 $\BB$ と完全関手 $F \colon \AA \to \BB$ が、「任意の $S \in \SS$ について $F S \cong 0$」という性質を満たすならば、$F$ は $Q$ を一意的に経由する。
分類結果[編集 | ソースを編集]
与えられたアーベル圏 $\AA$ に対して、そのSerre部分圏を分類せよ、という問題は、アーベル圏の部分圏の分類問題の中で最も古くから考えられてきた基本的な問題である。
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関連項目[編集 | ソースを編集]
一般概念[編集 | ソースを編集]
特殊概念[編集 | ソースを編集]
その他[編集 | ソースを編集]
- 濃厚部分圏(thick subcategory):三角圏におけるSerre部分圏の類似物。